ベートーヴェンのピアノソナタを聴こう!Op. 7編

4番までやってきた。意欲的な大きな曲が続く。4番は規模的にはOp. 106《ハンマークラヴィーア》に続く大規模な作品だ。Op. 2に引き続きアルタリア社から出た初版の表紙も《グランド・ソナタ》と名乗っている。ベートーヴェンの弟子でもあるチェルニーはこの曲について《熱情》というタイトルは有名なかのOp. 57よりこのOp. 7にふさわしいと書いている。チェルニーを信じるなら、ベートーヴェンはそれほど熱を込めてこの曲を書いたらしい。

https://s9.imslp.org/files/imglnks/usimg/f/f0/IMSLP50953-PMLP01406-Op.7.pdf

Op. 2の後発としてあまり間を空けず、1797年に出版された。Op. 2の3曲は基本的に1796年以前に作曲しているはずだけれど、それでも短期間に大きな曲をどんどん書いていて、ベートーヴェンが精力的に作曲しているのが伝わってくる。

誰の演奏で聴くか迷って、何人か聴いてみたのだが、フェインベルクの演奏が魔法のように素敵だったので彼のレコーディングを選んだ。

ピアニストサムイル・フェインベルク(1890-1962)。ロシア系のピアニスト。作曲家としても活躍した。
ベートーヴェン ピアノソナタ 第4番 Op. 71797年出版。変ホ長調。

シュナーベルもそうだが、1800年代生まれのピアニストの録音が残っているのは素晴らしいことだと思う。その時代の人たちはまだギリギリロマン派の香りを肌で感じていた人たちだ。つまり、リストやブラームス、クララ・シューマン本人ではないが、その直属の弟子くらいの人たちの演奏は残っているわけであり、歴史をそのまま耳にできることにワクワクする。フェインベルクのこのレコーディングはまるでお花が咲いたかのような美しい音とロマンティックさで、いい匂いのする演奏といった趣だ。

フェインベルクは作曲家としても活躍した人で、子ども向けの作品なんかも残している。

子ども向け作品としては複雑で繊細なつくりだと思うが、むしろ子どものころにこそそういう作品に親しんでおくことは重要だと思う。

さて、私はOp. 7の1楽章は出だしから生き生きとストレートに進んでいく印象を持っていて、実際そういうレコーディングも多いのだが、フェインベルクの演奏はそういうエッセンスは持ちつつも、1音1音を愛おしんでというか、道端の花を愛でながら歩いていくようなところがあって、「こんな素敵なところがあったのか〜!」と気づかせてくれるような演奏で好きにならずにいられない。和声感もユニークで、バスや、特に非和声音(和声の中にない音)の扱い方がペダリングも含めて天才的。3楽章とか素晴らしいと思う。また、この曲は4楽章の終わりがあっさりしているのも面白い。弾く側からすると、曲の終わりは盛り上がってくれた方がありがたいと思うこともあるのだが、こういう終わり方もまた味があって良いではないか。フェインベルクの演奏はスクリャービンと同時代に生きてその作品を愛奏していたピアニストならではというロマンティックさもあって、たとえばベートーヴェンと同時代のピアニストが弾いてもこういう演奏にはならないのだろうが、未来からベートーヴェンを振り返ったからこそ発見されうる魅力、というものがある気がする。

ちなみにこのOp. 7はバベッテ(バルバラ)・フォン・ケグレヴィッチ伯爵令嬢というベートーヴェンの弟子に献呈されている。彼女は1780年生まれなので、このソナタができた頃は16-17歳である。ティーンでこの曲を弾きこなすのはそれなりに大変なことだから、相当腕が立つピアニストだったのだろう。ベートーヴェンはこの人にピアノ協奏曲 第1番 Op. 15も献呈している。これも溌剌としていい曲なんだ…!

ケグレヴィッチ家はスロバキアに大邸宅を所有しそこに住んでいたが、ベートーヴェンも訪れたというそこは、今ではレストランやビストロも入り、「ベートーヴェン・アパートメント」という名の宿泊施設になっていて泊まれるそうですよ。ウィーンから電車で1時間半だそうです。Googleのレビューに伝え聞くところのベートーヴェン並みにキレてる人がいるのが気になるけど、ちょっと行ってみたい。

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