MTNAとはMusic teachers national associationの略。全米の音楽の先生たちの組合みたいなものらしい。これまでコンファレンスなどに行く大学の人たちから名前は聞いたことはあっても、自分自身がアメリカで本格的に教えていなかったので参加していなかったのだが、アメリカでピアノを教えるなら必要だなと思って加入しました。
音楽教育界隈というのは、現場で働いてみるとかなりローカルな価値観で動くように思う。特におすすめの教本とかコンクールとか、大体どんなふうな進度でレッスンを進めていくかということを日本にいた時は色々な形で人から学ぶことができた。友達に聞いたり、職場で出している教本を見たり、コンクールの課題曲をチェックしたり、それからもちろん自分が小さい頃に経験してきたレッスンを思い起こしたり。そういう情報を集めるのにあまり苦労した記憶はないので、自分はありがたい環境にいたんだな…と今更ながら実感している。
さてそこからアメリカである。私は大学院からアメリカに来たので、その過ごし方はある程度分かっているつもりだ。だけど子供のレッスンは…というと、自分の体験したことではないのでやや理解度が低い。よく使われている教本を買って少しずつ研究したり論文に触れてはいるつもり…!だが、やはり現場の声にかなうものはない。
というわけでこの前MTNAのアナーバー支部のミーティングに行ってきた。そもそも行ってみようと思ったきっかけは誘っていただいたことと、アナーバー支部のアカウントから「来たかったらおいで!」とメッセージをいただいたことで、これがなかったら私は今もぼんやりしていたと思うので、ありがたし。
そのミーティングで詳しく説明されたのは、アメリカのピアノ教育でよく使われているという試験形式のオーディションの話だった。これはコンクール形式が多い日本にはあまりないもので結構わかりにくい。オーディションを行う団体はいくつもあるようで、5つ紹介された。大手ピアノ教本の版元が開催しているもの、州規模のもの、特定の音楽学校が開催しているものなど、それぞれ特色があり、課題もアメリカの作曲家の作品を弾かせるところや、気楽に受けられるところ、難易度が高いところなどさまざまである。だが、大体において共通しているのはまずレベル別に分かれているところ、それからこれが面白いと思うのが、実技以外に音楽理論や聴音の試験もパッケージングされているところが多いことである。これは実技しか見ない日本のコンクールとはずいぶん違うなと思った。考えてみれば日本のソルフェージュは受ける学校によって形式が違うことが多く、「芸大和声」とか「桐朋のソルフェ」とか学校ごとに学習内容がやや違ったように思う。アメリカの場合は音楽科も多いのでそこをある程度統一しようということかもしれない(ただアメリカの聴音レベルは衝撃的に低いので、どうしてここでやっているのに…?という気持ちになった。逆に音楽理論とかは強いけどね!)。そして採点は絶対評価みたいだ。アメリカっぽい。一定の点数以上取れば州大会、全国大会、みたいなものを設けている団体もあれば、トロフィー的なご褒美が用意される団体もあるらしい。ある程度の点数をとれば、音楽科でなくても大学入試などで有利に働く場合もあるようで、そういう意味でも受験者が多いらしい。これもアメリカっぽい。こういった中から自分や生徒さんの需要に合うところを選んでいくわけだ。
ミーティングには大体20人くらい先生がいたと思うが、大体の先生方が何らかの形で生徒たちを試験に参加させているようで、どうやら日本のコンペとシステムは違うが役割は少々似たところがあるかもしれない。全国レベルの団体から地区レベルの支部に分かれて、試験だけでなくイベントやマスタークラスもやっているのはPTNAっぽいなと思った。
自分がこのシステムの中でうまく馴染めるのかはやや不安なのでよく勉強しつつ、しかし基本的にはうまくこの制度を利用しつつ、生徒さんに合ったやり方で教えられるといいなという感想。
多分日本とアメリカのピアノの先生界隈が気になる方も各所にいると思うので、ちょっと恥ずかしくはあるが、関連のことはこれからも詳しくレポします。基本思ったままを書いていくので後から「これは違った」ということもあると思うけど、それはそれ、ということでよろしく。



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