ベートーヴェンのピアノソナタを聴こう!Op. 10-2編

きた!ついに6番。自分の高校受験で課題曲だった、懐かしい一曲である。今もよくコンクールの課題曲になったりするので、特に10代のピアノ弾きには馴染み深い一曲と言えるかもしれない。ベートーヴェンの交響曲は、たとえば5番と6番が同時に初演され、対称的な作品だが、ピアノソナタの5番と6番もペアのようにも聴けて面白い。二つともコンパクトな中に魅力が詰まった曲なので、両方弾いてみるのも良いだろう。先日亡くなったポリーニの演奏で聴いてみたい。

ピアニストマウリツィオ・ポリーニ(1942-2024)。イタリア出身のピアニスト。ショパン他、現代曲のレパートリーも充実。
ベートーヴェン ピアノソナタ 第6番 Op. 10-21798年出版。ヘ長調。

ベートーヴェンは、言ってみれば悲劇も喜劇も描ける作曲家だが、この曲は彼の楽しくユーモアに満ちた面が聴けるように思う。例えば出だしのアウフタクトも呼びかけと答えみたいだ。深刻な話ではない。何気ない挨拶、ほとんど世間話のような応答が魅力的である。

ポリーニの演奏を久方ぶりに聴いた。そのクリーンでスマートな演奏を聴いて、つくづく今現在生きているピアニストは多かれ少なかれ皆この人の影響を受けていると思った。聴いてみるとなんとなく、演奏が予想通りだなという感がなくもないのだが、それはポリーニのせいではない。彼はオリジナルであり、その演奏に感銘を受けた我々が真似をしまくっているだけの話である。これはグレン・グールドのバッハにも似たようなことが言えると思う。

あっさり目のめっちゃ美味しい塩ラーメンみたいな演奏というともしかしたら顰蹙を買うかもしれないが、私のごく素直な感想はそれである。テンポが速めなのも影響しているのだろう。でもただ速いわけではなくて、ちゃんとコクがある。2楽章中間部の変ニ長調の音色の暖かさ、充実具合など心から美しいなと思う。

3楽章はまるで列車が走っているみたいな音楽だとずっと思っていた。1790年代に列車はまだなかったわけだが、疾走感があって8分音符がずっと刻まれている感じが列車を思い起こさせるのである。この3楽章、難しいよね。ポリーニのテンポは特急テンポで、なんの危なげもなく走っていくのでさすがである。しかも、見せつける感じが全然ないんだよね。そこがすごい。サラーっとすごいテンポで走っていくこの演奏に影響された世代、それが我々であるなと思った。

ちなみにシュナーベルの楽譜を見ながら聴いたがフェルマータがついた休符の長さなどを指定してくれており、またもや面白かったので、おすすめでございます。

中学生くらいで弾くとちょっと挑戦かもしれないが、形式やテクニックも含め「ベートーヴェンっぽさ」を学ぶのにとても勉強になる曲だなと改めて思う。だから課題曲によくなるんだね。課題曲って嫌な思い出ばっかりできちゃうかもしれないけど、大人になってみるとまた違う見方ができるように思う。大事に弾いてあげてください。

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