06/19/2024

久しぶりにソロの本番をさせてもらった。40分くらいの小さなコンサートだったが、ソロだけで演奏するのは大体2年ぶりくらいかもしれない。ヒエー。

ショパンのプレリュードはずっと弾いてみたい曲だったので、去年から取り組んだ。複数の友達が博士課程の時リサイタルで弾いているのをこれまでに聴いたことがあって、そのたびにいい曲だなと思っていた。いつか弾きたいと思いつつ、でも、自分の博士時代は他にも弾きたい曲がたくさんあって、取り組まなかった。修士の時にショパンのソナタ3番に取り組んだので、他の作曲家の作品も弾いておきたいと思う気持ちもあった。

それでもいつか弾く機会は来るとのんびり思っていたのだが、いざ日本で働き出してみたらそんな考えは甘かったことがすぐ分かった。ソロの新曲を練習する時間が全然ない。フルタイムで楽譜編集をやって、室内楽やレクチャーの本番を月一ペースで入れて、レッスンやら書き物やら、他の仕事も少しずつやると、セルフブラック企業状態になってしまい、時には72時間働けますか、というようなことになってしまった。一度ソロリサイタルをしたのだが、新しい大きな曲をプログラムに入れるのは無謀だと判断し、これまでにやった曲をメインにした。

そうやってやった仕事はどれも好きなことだったので、後悔はない。いろいろ学んだし、生きていくためにも必要なことだったし、そういう風に時間を過ごせて良かったなと思う。ただ、30代前半という体力と気力が両方揃っている時期に、ソロのレパートリーを増やせなかったことは残念だなあと思っていた。ところが2023年にアメリカに戻ってきたら、就労ビザが出るまでに何やかやと時間がかかる手続きがあり、時間ができた。もうここで練習をしなかったら、自分は一生ソロの曲を弾かないかもしれないと思った。もし自分が生まれ変わったとしてもピアノは弾かないかもしれないし、自分がピアノを弾けるという状態はここで機を逃したら二度とないなと考えてプレリュードを弾くことにした。

久々にソロの曲をやったら、譜読みも暗譜も以前より時間がかかった。その部分の脳を使ってなかったのだろう。そもそも難しい曲だし、時間をかけてゆっくりやった。ショパンの色々な要素が詰まっていて、色々なレコーディングも聞いたりして良い勉強になった。

レッスンを受けずに大きな曲を構築していくのは大変だった。学生時代に強制的に週一のレッスンがあったのはすごいことだったなと思う。25年くらい色々な先生から手取り足取り教えてもらったのだから一人で弾けるようになれよという感じだが、週に一回緊張して先生の前で弾くという経験はそれだけで貴重だったんだなと思う。

本番は久しぶりだったので緊張するかと思ったけど、思ったより心持ち軽く臨めた。何も起きなかったわけじゃなかったけど、まあ大きな曲を初回本番にのせる時はある程度覚悟して臨む他ないので、今後また頑張るほかあるまい。人前で話す英語が久々ですごく不安だったのだが、意外となんとかなった。良かった。

この本番と同時進行でビザの手続きが進んだので私が社会へ戻る日がそのうち訪れる。そうなったらまた忙しくなるんだろう。行く末はわからないが、これほど時間ができることはもう一生ない気がする。その時間に読んだこの曲はずっと大事にしていきたい。

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